離婚法律用語集

悪意の遺棄 あくいのいき

悪意の遺棄とは、何ら正当性のある理由なく、配偶者に対して協力をせず、放置する態度を示すことを言います。

本来夫婦の間においては、協力義務や扶助義務といった、相互に助け合ってより良い生活を構築するための義務があるとされています。そのため、このような夫婦間における基本的義務を守らず、一方的に配偶者を放置する態度をとり続けるような場合は、離婚原因として認められることとなります。

もっとも、悪意の遺棄に当たるかどうかは個別具体的な判断を要するため、夫婦の生活状況や金銭負担割合、婚姻期間などを考慮して判断されます。

慰謝料 いしゃりょう

慰謝料とは、損害賠償請求権のうち、精神的損害を理由とするものを言います。本来、損害賠償とは発生した財産的損害に認められるものですが、相手の行為によって看過しがたいほど重大な精神的なダメージを受けてしまった場合は、その補填として金銭での賠償を求めることができます。

離婚の場面における慰謝料請求の原因としては、配偶者にDVを受けた、配偶者に浮気をされたなどが一般的ですが、それ以外であっても本人が重大な精神的ダメージを受けたと言える場合は、慰謝料請求が認められる可能性があります。

もっとも、このような慰謝料請求を個人で行うと、感情的になってしまうことも多いため、客観的かつ冷静に判断をすることができる弁護士に相談の上、請求をするのが好ましいと言えます。

慰謝料的財産分与 いしゃりょうてきざいさんぶんよ

本来、財産分与は夫婦の間における財産形成の寄与度に基づいて行われるものですが、夫婦の一方の帰責事由によって離婚する場合、それによって生じる慰謝料も含んだ割合で財産分与を行うことを慰謝料的財産分与と言います。

例えば、夫婦の財産形成寄与度が夫婦1対1の場合であったとしても、夫が原因で離婚する場合は、その慰謝料を鑑みて、夫1妻2の割合で財産を分与する場合などが挙げられます。

氏の変更の許可 うじのへんこうのきょか

離婚などの理由によって、婚前の氏へと変更したい場合、氏の変更の許可を家庭裁判所から受ける必要があります。(戸籍法107条)

この場合、氏の変更を認めなければならないと言えるほど、「やむをえない事情」が存在することが必要になります。そのため、単に氏が気に入らなくなったといった事情では許可を得ることが難しく、その氏を利用することによって実生活上何かしらの不利益を被るような場合であることが必要となります。

このような、「やむをえない事情」の主張は、氏の変更を求める本人が行うよりも、氏変更手続に熟知した弁護士に依頼する方が、円滑に進むことが期待されます。

遠隔地保険証 えんかくちほけんしょう

遠隔地保険証とは、扶養者と被扶養者が離れて生活している場合に、便宜のために交付される保険証のことを言います。

本来、国民健康保険は住民登録を行っている市町村にて加入するのが一般的ですが、修学やその他の都合により、扶養者と被扶養者が生計を別にする場合があります。この場合に、被扶養者が別途特別の保険証を持つことによって、生活地域での保険利用の便宜を図るものです。この場合の遠隔地保険証は毎年更新されるため、被扶養者を連れて夫婦の一方が別居しているような特殊な状況にある場合は、更新手続きに必要な事項を忘れずチェックするのが望ましいと言えます。

円満調停 えんまんちょうてい

夫婦関係が悪化した場合であっても、即座に離婚するのではなく、家庭裁判所の下、円満な夫婦関係を修復し、生活を維持存続させるための調停手続きを夫婦関係調整調停といい、別名円満調停といいます。

この円満調停では、家庭裁判所の調停員を間に挟み、両者の主張を交えながら夫婦関係を再構築できるかの話し合いを検討することとなります。もちろん、必ず夫婦関係を維持するという方向での結論を出さなくてはならないわけではなく、夫婦関係悪化の原因究明の結果、関係を維持することが困難であって、離婚するのが相当であるとの結論に行き着いた場合は、円満調停を利用して調停離婚を行うこともできます。

いずれにせよ、夫婦の間に中立的な第三者を交えて話し合いをすることができるという点で有用性の高い制度と言えます。

回復不可能な精神病 かいふくふかのうなせいしんびょう

回復不可能な精神病とは、法定離婚事由の一つで、これが認められる場合は、裁判所を通じて離婚を行うことができます。

回復不可能な精神病が配偶者に生じてしまった場合、夫婦として相互扶助の下生活するのが極めて困難となるため、離婚を認めて両者互いにより良い生活環境を求めることのできる状況が作れるようにすることが、この規定の趣旨となります。

実際に裁判所に回復不可能な精神病として認定してもらうには、専門医による鑑定書や診断書の結果を通じて立証していくこととなります。もっとも、専門医が回復不可能な精神病と認定したとしても、裁判所がその通りの判断をするかどうかは別の問題となります。

裁判所が回復不可能な精神病と認定した場合、離婚が成立することとなるため、それが本当に夫婦のためになるのか、特に精神病を患うに至ってしまった一方の配偶者にとって酷なものではないかという観点から、慎重な判断がなされます。

そのため、一般的には回復不可能な精神病の認定による離婚は困難と言われているため、配偶者が重度の精神病となってしまい、婚姻生活を継続することが困難で、離婚を求めているような方は、どのような手段を通じて離婚すべきか、弁護士に相談するのが望ましいと言えます。

家事審判 かじしんぱん

家事審判とは家庭裁判所を利用して、審判形式の下紛争解決を図る制度のことをいいます。

家事調停を経ることなく、家事審判から開始される事件を甲類事件といい、子の氏の変更許可を求めるものや、相続放棄などが該当します。対して、当事者間に争いがあり、まずは家事調停を経た上で、調停の場での解決が望めない場合に家事審判によって判断されるものを乙類事件といい、親権者の変更や養育費の請求を求めて行うものとなります。

家事調停 かじちょうてい

家事調停とは調停委員会の介入の下、当事者主体の話し合いの中で紛争の解決を行う制度を言います。紛争当事者が独自に話し合いを進めても、感情論による反発を生じさせ、話し合いがうまく進まなくなる可能性があります。そのため、調停委員会という中立公平な第三者を交えることによって、スムーズな話し合いと解決の実現を目指すことになります。

また、家事調停の場で合意された内容は調停調書に記載され確定判決と同一の効力を生じさせることから、後日、合意した内容について蒸し返される可能性は小さいと言えます。

そのため、簡易な手続でありながら、紛争解決への期待が強い制度であると言えると思います。

家庭裁判所 かていさいばんしょ

家庭裁判所は家庭に関する問題を取り扱う裁判所であり、裁判だけでなく調停や審判も行われている場所です。

家庭裁判所で扱う事件は、家事事件などプライベート性の高い事件が多く、また、判決によらず、当事者同士の円満な話し合いによって解決がなされることが強く求められることもあるため、話し合いのための制度が充実しています。特徴的なものとして、家事調停委員の存在などがあります。家事調停委員は、当事者同士の話し合いをスムーズに進めるために当事者の間に入り、話し合いのサポートをしてくれます。

家庭裁判所で取り扱うのは、離婚だけでなく、親権についての争いや、改名の手続きなど幅広いものが対象となっています。

そのため、自分が今から行おうとしている行為が、家庭裁判所で行うべきことなのか、その他の裁判所で行うべきことなのかについて悩んだ場合は、弁護士に相談することも必要です。

監護権 かんごけん

監護権とは、子供を養育し、看護する権利のことを言います。本来、子供の親権の中に監護権が含まれていますが、場合によっては監護権者と親権者を分離して立てることもあります。この場合は、監護権者が子供の養育を担当し、親権者が子供の財産を管理するというような方法で、役目を分担することが多いです。

親権者を定めるのは、離婚時に必須となりますが、監護権者を夫と妻のいずれにするかについては、離婚時に定める必要はありません。そのため、事後的な事情の変化に応じて、監護権者を変更することを求めることもできます。

この場合、監護権者を変更すると、子供を養育する立場が変更されることとなりますから、生活状況が変化する子供のことも考慮し、慎重な判断を要します。

監護権変更 かんごけんへんこう

原則として、子供の養育は親権者が担うものですが、必要に応じて親権者と別に監護権者を設定することができます。この場合の手続きを監護権の変更と言います。この手続きは当事者の任意の話し合いによっても行うことができますが、それが叶わない場合は調停あるいは審判の形式によって行うこととなります。

この監護権変更が認められるかどうかは、「子供の利益のために必要があると認められること」が認められる必要があります。そのため、当事者同士の都合だけでは変更することはできず、誰を監護権者にすることが、子供にとって利益であるかを考えて行われることとなります。

協議離婚 きょうぎりこん

協議離婚とは、当事者の話し合いによって独自に行われる離婚手続きのことを言います。

この協議離婚においては、法律上の離婚事由が存在する必要がなく、あくまで当事者間の都合によって離婚をすることができます。もっとも、協議離婚の場合であっても、子供がいる場合はその親権者について定める必要があります。離婚後はどちらか一方が子供を引き取って生活をするため、親権者についての定めが重要になるためです。離婚届にも、親権者についての記載欄があり、これを欠く場合は書類の不備として扱われることとなります。

また、離婚後の財産分与や養育費、面会交流の有無など、離婚後の取り決めについて定めておくのが好ましい事項は多々あります。そのため、離婚に詳しい弁護士に依頼し、離婚後のために取り決めておくべき事情について説明を受けるのが好ましいと言えます。

兄弟不分離 きょうだいふぶんり

離婚に伴って、子供の親権を父母の一方に認める場合に考慮される事情として、兄弟不分離という事情が存在します。

これは、子供が成長して人格形成をしていくためには、兄弟とともに生活するということが極めて重要であることから、親権を定めるにあたっては、兄弟の一方ずつを父母に分離して親権を認めるのではなく、兄弟は分離することなく、一人の親権者のもとで生活するのが好ましいという考えに基づくものです。

もっとも、兄弟がいる場合は必ずこの兄弟不分離という事情に従って親権者を定めなければならないわけではありません。この兄弟不分離は、子供の人格形成に必要という点から生まれた事情であるため、すでに相当程度の人格が形成されている段階、すなわち子供がある程度の年齢まで成長しているような場合は、兄弟不分離の事情より、むしろ子供それぞれがどう考えているかという意思が重要となってきています。

そのため、離婚に際して子供の親権がどうなるかを考えている親は弁護士に相談し、どのような事情が親権の決定に影響を与えるかについてアドバイスを受けることが必要です。

居所指定権 きょしょしていけん

居所指定権とは、親が子に対して有する親権の一内容として、子の居所を指定することができる権利のことを言います。

親は子供に対して、教育し、監護する義務があるところ、このような義務を果たすためには、子供が住む場所について定めることができなければなりません。子供が自由に生活の場を変更できるとなると、親は子供に対して養育することが困難になりかねないからです。

そのため、親には子供に対する義務を果たすための便宜として、このような居所指定権が与えられています。

婚姻準正 こんいんじゅんせい

婚姻準正とは、法律上の婚姻関係にない夫婦の間に生まれた子供について、父親が認知をした後に、夫婦が法律上の婚姻関係に至ることを言います。

この場合、生まれた子供に対して父親が認知することによって、生まれた子供と父親との間の親子関係が発生し、その後夫婦が法律上の婚姻関係に至ることによって、生まれた子供は嫡出子としての身分を取得することとなります。

本来、嫡出子は法律上婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子供のことを言いますが、婚姻準正のように子供の出生と法律上の婚姻関係構築の順序が前後する場合であっても、子供に嫡出子としての身分を認めることができるものです。

婚姻費用分担請求 こんいんひようぶんたんせいきゅう

夫婦やその子供が一般的な日常生活をするにあたって必要な、居住費、生活費、子供の学費のことを総称して婚姻費用と言います。

この婚姻費用については、夫婦が分担して負担するのが原則ですが、夫婦の一方が婚姻費用を負担しない場合には、その一方に対して負担すべき婚姻費用について請求することができます。この請求を婚姻費用分担請求と言います。

この婚姻費用分担請求については、まず当事者間の話し合いで定めることから始まりますが、それによって定まらない場合は調停手続によって、検討していくこととなります。この調停手続によっても定まらない場合は、審判によって定めることとなります。

この婚姻費用については、夫婦それぞれの収入や資産の状況など様々な要素を考慮して判断がなされますので、夫婦問題に詳しい弁護士に相談した上で、請求の検討を行うことが重要と言えます。

婚姻を継続しがたい重大な理由 こんいんをけいぞくしがたいじゅうだいなりゆう

夫婦関係に対して修復不能な溝を作り、今後関係を維持することを不可能に至らせる原因のことを、婚姻を継続しがたい重大な理由と言います。

この婚姻を継続しがたい重大な理由は様々な要因が挙げられますが、その中で比較的大きな割合を占めるものとして、性格の不一致が挙げられます。この場合の性格の不一致とは、単に性格が合わず仲が悪い程度ではなく、互いの関係を破綻させるほど著しい性格の違いがあることを要します。

その他にも、夫婦の一方によるDVその他暴力行為や、強い浪費癖、親族との著しい不和が挙げられます。これらはいずれも、夫婦の一方に身体的に耐え難き負担を与える、金銭的に負担を強いる、精神的に追い込むなど、生活を維持することのできないほどの要因である必要があります。

これらはいずれも、離婚を主張するものが立証する必要があるため、このような離婚の事案に関して強い弁護士に依頼して行ってもらうことが、円滑に離婚を実現するにあたって重要と言えます。

失踪宣告 しっそうせんこく

失踪宣告とは、所在が不明で生死が明らかでない者について、家庭裁判所で申し立てることを通じて法律的にその者の死亡を確定させることを言います。

この失踪のうち、失踪者が行方不明となってから7年間生死が明らかでない場合になされる失踪宣告を普通失踪(民法30条1項)といい、天災や戦争によって消息が不明となり、その後1年間生死が明らかでない場合になされる失踪宣告を特別失踪(民法30条2項)と言います。以上の失踪宣告の手続きは、失踪者の配偶者など、失踪者と身近な関係にある者にしかできません。

この手続きを完了することによって、失踪者の法律的な死亡が確定された場合、失踪者の配偶者は婚姻関係の解消を行うことができるなど、失踪者死亡と同等の法律効果を得られることとなります。

もっとも、このような失踪宣告は家庭裁判所に申し立てる必要があり、通常馴染みのない制度であるため、利用を考える人は弁護士に相談して依頼するのが簡便と言えます。

児童虐待 じどうぎゃくたい

児童虐待とは、児童を保護すべき立場にいる者が、児童に対して加虐的な行為を加えて、子供を害することを言います。

この児童虐待は、親と子供の間で問題となり、児童虐待があることを理由に、離婚または親権者の変更といった手続きを行うことも考えられます。

この場合の児童虐待とは、単に蹴ったり殴ったりといった暴行行為だけを指すのではなく、行うべき養育を行わないようなネグレクト、具体的には食事を提供しなかったり、衛生環境を整えないまま放置するといったことも児童虐待として含まれます。

そのため、児童虐待を理由に離婚または親権者の変更を考えている人は、どのような理由で児童虐待を立証していくべきなのか、弁護士に相談した上で決定するのが望ましいと言えます。

熟年離婚 じゅくねんりこん

熟年離婚とは、結婚生活を長く共にした夫婦が離婚することを言います。

具体的なものとして、夫が定年退職した後、家庭内での夫婦の関わり合いが増えたことが、帰って軋轢を生む原因となってしまい、離婚に発展したというケースが挙げられます。

このようなケースだけが、熟年離婚の特徴とは言い切れませんが、長年生活を共にしてきたにもかかわらず離婚しようとする当事者の間には、深い溝が生じていることも少なくなく、協議離婚ではうまく折り合いがつかず、訴訟にまで発展することもあります。

重婚 じゅうこん

重婚とは、すでに婚姻している者が他の者と婚姻することによって、20以上の婚姻関係が生じている状態を言います。

これは、婚姻関係においては一人の夫一人の妻という一夫一婦制を採用する日本においては、その原則を崩すような重婚関係を認めるべきでないという発想が出発点にあります。

そのため、もし重婚を行った場合は、重婚罪(刑法184条)が成立し、民法上は重婚前に生じていた前婚については離婚事由となり、重婚後に生じた後婚については、取消原因として扱われることとなります。

もっとも、ここでいう重婚が成立するためには、前婚及び後婚がともに法律婚である必要があり、事実上の婚姻関係と呼ばれる内縁関係などは含まれません。

人身保護請求 じんしんほごせいきゅう

人身保護請求とは、裁判所への請求を通じて、子供の引き渡しを求める請求手続きをいいます。離婚などによって、子供の親権者が夫婦の一方に確定した場合、親権を有するに至った親の元へ、子供は生活環境を移す必要があります。もっとも、子供を手放すことを惜しみ、親権を有さない親が子供を引き渡さない場合もありえます。このような場合、原則として子供の引き渡しを金銭賠償と合わせた間接的な強制で、求めていくこととなります。子供を強制的に引き渡すように求めることは、子供にとっても負担が大きいため、あまり好ましい手段とは言えないためです。

もっとも、上記のような間接強制でも子供の引き渡しがなされない場合は、最後の手段として人身保護請求を利用することとなります。

人身保護請求を利用するには、人身保護法3条に基づき、あらかじめ弁護士を代理人として指定した上で、人身保護請求を求めるための疎明資料を裁判所に提出していくことになります。とはいえ、人身保護請求は子供を強制的に引き渡すように求めるものであるため、子供への負担が大きく、現在ある子供の生活環境では、子供が十分に生活できない緊急性がある場合にのみ認められることとなっています。

そのため、人身保護請求は簡単に認められる制度ではないと言えますので、人身保護請求を申し立てる場合は、あらかじめ弁護士に相談し、事前の周到な準備のもとで行うのが好ましいと言えます。

児童扶養手当 じどうふようてあて

児童扶養手当は、父母が離婚等をすることによって、父母の一方と生計を同じとしない児童を育成する家庭に対し、その生活支援の目的で地方自治体が給付する支援金のことを言います。

この児童扶養手当は、ひとり親家庭であれば、給付を受けることができる余地がありますが、実際に給付を受けられるかどうかについては、所得による制限など様々な支給要件を満たす必要があります。

また、支給される手当の額も、子供の人数や親の所得に応じて変動するため、給付を受け得る家庭であっても、中々児童扶養手当を受けていないケースが存在します。

そのため、ひとり親家庭で児童扶養手当を受けていない家庭は、支給要件等について弁護士に相談し、申請することを考慮することが望ましいと言えます。

親権者変更 しんけんしゃへんこう

親権者変更とは、夫婦の婚姻解消等に際して、子供の親権を持つものを定めたものの、その後の事情によって親権者を変更することを言います。

親権者は直接子供を養育する者をいいますので、親権者の変更は子供の成長に大きな変動を与えかねません。そのため、親権者変更は父母の間における話し合いだけでは行うことはできず、親権者変更調停を利用し、家庭裁判所における判断を受ける必要があります。

もっとも、一旦子供のためとして定めた親権者を後から変更することは、子供の生活環境を大きく変更させるものとなるため、簡単な理由では親権者変更は認められません。そのため、親権者変更を行うには、現在の親権者が育児放棄をしていたり、散財が激しく養育に不向きである等、親権者を変更すべき理由を主張する必要があります。

そのため、親権者変更を希望するものは、調停を通じて親権者変更が認められるかどうかについて、親権に詳しい弁護士に相談し、その展望について伺うことが望ましいと言えます。

親権喪失 しんけんそうしつ

親権者による親権の行使が著しく不適切であり、子供の権利を侵害しているような場合、家庭裁判所に親権喪失の審判を申し立てることによって、親権者の親権を喪失させることができます。

親権は子供の育成に必要なものであり、親権者の義務であるため、親権喪失を行うことが、子供の権利を守る上で必要といえるかどうかによって決定されることとなります。

そのため、親権喪失は子供に対する虐待や悪意の遺棄がある場合にのみ認められ、その認定は限定的に行われることとなります。

この親権喪失を申し立てる予定がある人は、弁護士に相談の上、自分の申立てが認められるかどうかについて確認する必要があると言えます。

親権停止 しんけんていし

親権者による親権の行使が不適切であり、子供の権利を侵害しているような場合、家庭裁判所に親権停止の審判を申し立てることによって、親権者の親権を停止させることができます。

この親権停止の制度は、子供に対する親権の行使が、困難ないし不適当である場合にのみ認められるとされています。そのため、親権停止を求める者は弁護士にその展望を伺った上で、手続きを行うかどうかについて決めることが望ましいと言えます。

人事訴訟 じんじそしょう

夫婦の離婚、子供の認知、親子関係の確認等、家族関係に関する民事訴訟のことを総称として人事訴訟と言います。この人事訴訟は、民事訴訟の一形態であるものの、管轄の裁判所は家庭裁判所となることが特徴的です。

また、調停や審判など、訴訟の前段階における紛争解決制度が充実しており、訴訟の場においても積極的に和解が勧告され、柔軟な解決が志向されます。さらに、通常の民事訴訟と異なり、裁判所の裁量が広く、裁判手続きを当事者のプライバシーに配慮し、非公開とすることもできます。人事訴訟は、家庭という極めて繊細でプライバシー性の高い領域での紛争であることから、このように通常の民事訴訟とは異なる運用がなされます。

審判離婚 しんぱんりこん

家庭裁判所において、調停委員を踏まえて離婚に関する調停を行ったものの、具体的な解決が望めず、これ以上の進展が期待できない場合は、家庭裁判所の職権によって離婚に関する審判を開始することができます。この審判を通じて離婚を行うことを、審判離婚といいます。

審判は、家庭裁判所が中心となって行われますが、その審判に対して当事者は、2週間以内であれば異議を申し立てることができます。そしてこの異議申し立てがなされた場合は、審判は効力を失うこととなります。

他方で、当事者から異議申し立てがなされなかった場合は、審判は確定し、その内容について確定判決と同様の効力が発生することとなります。そのため、当事者は審判の内容に法的拘束を受けることとなり、これを通じて強制的な解決を実現することとなります。

もっとも、この離婚の審判は手続きに時間がかかるものの、当事者の異議申し立てによって簡単に効力を失うため、実用的な制度とは考えられておらず、あまり利用されるケースは多くありません。そのため、審判が開始された場合、当事者は審判制度をあまり理解できず、誤った判断を行ってしまう可能性があります。それを避けるためにも、審判が開始された場合は弁護士に相談し、注意すべき事項について教えてもらうことが必要です。

審判確定証明 しんぱんかくていしょうめい

審判確定とは、裁判所において審判がなされた後、その審判が確定したことを証明することを言います。

この確定証明は、書面の形式で作成されるところ、審判で離婚が確定し、役所に離婚届を提出する際、など家事事件に関する審判の結果を公に証明する場合は、この審判確定書が必要となります。

そして、この審判確定書は審判がなされたら必ずもらえるものではなく、審判確定を必要とする場合に申請することによって得ることができます。そのため、審判後早急に審判確定を要する場合は、事件担当の書記官に対し、その旨を伝えることが望ましいと言えます。

接近禁止命令 せっきんきんしめいれい

接近禁止命令とは、配偶者から暴行、傷害を受けることによって、生命身体に対する危険が継続的に存在するような場面において、裁判所が当該配偶者に対して、命令の申立人に近寄らないよう命令することを言います。

この接近禁止命令が出されると、6ヶ月間の間、申立人の住居や勤務地周辺に近寄ることが禁止されます。そのため、慢性的にDVを受ける申立人は平穏な生活を回復するために、配偶者から一旦離れた生活を行えるようになります。

もっとも、この接近禁止命令は、命令を受ける者の行動を大きく制限するものであるため、この命令が認められるためには、申立人が身体的暴力を振るわれることによって、生命身体に対し重大な危害が及ぶ恐れがあることを立証する必要があります。この身体的暴力の中には言葉による暴力は含まれず、暴行といった有形力が中心となります。

清算的財産分与 せいさんてきざいさんぶんよ

清算的財産分与とは、離婚の際に行われる夫婦の財産分与において、夫婦両者が協力して財産形成を行ってきたことを考慮して、その財産が現在どちらの名義となっているかなどの事情に関わらず、夫婦の共有財産として、互いの財産形成の寄与度に応じて公平に分配するというものを言います。

この精算的財産分与は、あくまで夫婦間の財産形成の寄与度によってなされるため、離婚の原因をいずれが作ったかといった事情は反映されません。

また、婚姻前から一方が所有していた財産や、夫婦協力による財産形成とは関係なく、一方が他人から財産を相続したような場合は、清算的財産分与の対象となりません。

そのため、どの財産が財産分与の対象になるのか一見では判別しづらいため、清算的財産分与を利用しようとする人は、財産分与に詳しい弁護士に相談し、財産分与の計算について伺うことが重要と言えます。

身上監護権 しんじょうかんごけん

身上監護権は、親が子供に対して有する親権のうち、子供の身の回りに関する監護を内容とした権利のことを言います。

身上監護権以外にも、親は子供に対して親権の内容として財産管理権を有し、子供の財産について管理することができますが、身上監護権は、子供が成長していくために必要な生活環境を指定すること、子供が何か正しくない行いをした場合にそれを矯正する懲戒すること、子供が何か職業を選択して実践しようとした場合に、それを許可するかどうか判断することなどを含んでいます。

このように、身上監護権は子供の教育に必要な監護権の総称をいうものであり、親権者であれば当然に認められる権利と言えます。

清算条項 せいさんじょうこう

清算条項とは、和解がなされる場合に作成される和解契約書、または和解調書において織り込まれる条項であり、本件で対象となった紛争以外においても何ら債権債務関係がないことを相互に確認するための文言です。

基本的に、和解の効力は和解で定められた範囲でのみ、効力を生じます。そのため、和解終了後に、和解時に主張していなかった事項を持ち出して解決したはずの問題を再び再燃させるといったことも可能になります。

もっとも、それでは和解を通じて紛争を解決しようとする当事者の意思にそぐわない結果になってしまい、特に離婚のような細かな当事者同士の協議が求められる場面においては、後から思い出したような主張をあらかじめ封じて、一度に権利関係を確定する必要があります。

この場合に、和解の中に清算条項を織り込んでおけば、和解成立時において当事者の間には何ら債権債務関係がないことが確定するため、上記のような蒸し返しの主張を封じることができます。

清算条項は和解がなされる場合は必ずと言っていいほど織り込まれる文言であり、これを欠く和解案を作成しないよう慎重になる必要があります。もし、自ら和解案を作成するのが不安な場合は、離婚に詳しい弁護士に相談し、代わりに和解案を作成してもらうのが安全と言えます。

待婚期間 たいこんきかん

離婚後、再婚をしようとする場合、男性の場合は即座に再婚をすることができますが、女性の場合は一定期間が経過しなければ再婚ができないという、待婚期間の定めが存在します。

そのため、女性は離婚から6ヶ月が経過しなければ再婚することができないとされています。これは、民法上婚姻成立の日から200日を経過した後に生まれた子及び離婚後300日以内に生まれた子は離婚した夫の子と推定される規定があるため、女性が離婚後すぐに再婚してしまうと、再婚後に生まれた子供が前の夫と今の夫のいずれとの間の子か不明になってしまいます。そのため、このような子の親に関する推定を明確とするために、待婚期間が定められています。

もっとも、今日においてはDNA検査などによって前の夫と今の夫のいずれとの間の子かについて正確かつ短期間で調べることができます。そのため、6ヶ月間という長期間もの間、女性に再婚できない期間を設けることは違憲であり、その待婚期間が100日を超える部分についての規定は、最高裁判所によって否定されています。

この待婚期間に関しては、繊細な議論であるため、再婚を考える女性は、待婚期間について弁護士に相談した上で考慮することが望ましいと言えます。

嫡出子 ちゃくしゅつし

嫡出子とは、法律上の婚姻関係にある男女の間で出生した子供のことを言います。

まず、男女の間で出生した子供は、男女が法律上の婚姻関係を有しているかどうかによって、非嫡出子と嫡出子に分けられます。そして、嫡出子であったとしても、婚姻の成立200日以内に生まれた子供は、夫の子供の推定を受けない嫡出子として扱われます。

嫡出子か非嫡出子かどうかによって、子供の相続分に差異がないのが現在の規定ですが、非嫡出子である場合は戸籍上父親の認知がない限り、父親欄が空欄となってしまうため、戸籍を確認することによってその人物が非嫡出子かどうかの確認ができてしまうという事実上の差異は存在します。

次に、推定される嫡出子との間の親子関係を争うためには嫡出否認の訴え(民法775条)を提起する必要がありますが、推定を受けない嫡出子に対しては、親子関係不存在確認の訴えで争うことができるという点に差異があります。

嫡出否認の訴え ちゃくしゅつひにんのうったえ

嫡出否認の訴えとは、父とこの間に父子関係がないことを確認する訴えのことを言います。父と子の間に父子関係がある場合、父には子に対する扶養義務が生まれ、子は父の相続人として扱われることになります。もっとも、何らかの事情で父子関係がないことが確認された場合、現在生じている父子関係を解消するために嫡出否認の訴えを提起することとなります。

この嫡出否認の訴えは、原則として父親から提起される必要があります。また、訴えを提起するにあたっては、父親がこの出生を知ってから1年以内になされる必要があります。そのため、父親が子の出生を知ってから1年が経過してしまっている場合は、父と子の間の父子関係は確定し、父親は嫡出否認の訴えを提起することができなくなります。

この嫡出否認の訴えでは、生物学的に見て父と子の間の父子関係不存在を立証する必要があるため、今日ではDNA検査などの科学的手法が採られることが多いです。

もっとも、嫡出否認の訴えそのものは、父子関係を根底から覆すものであり、当事者にかかる負担は大きなものとなりがちです。また、家庭内の事情であることから、他者への相談がしにくいという側面もあります。そのため、嫡出否認の訴えを考えているような場合は、家族関係の法律問題に詳しい弁護士に相談し、丁寧なアドバイスを受けることが必要と言えます。

懲戒権 ちょうかいけん

懲戒権とは、親が子供を教育するにあたって必要な懲戒を行う権利のことを言い、民法822条で定められています。

ここでいう懲戒とは、叱ることや叩くことを言います。もっとも、親は子供に対して教育の名の下にあらゆる懲戒が許されるというわけではなく、あくまで子供の利益のために必要な範囲でのみ、認められることとなります。そのため、行きすぎた懲戒権行使は、子供に対する児童虐待として捉えられかねないものとなるため、注意が必要です。

懲戒権は、あくまで子供の教育上必要な場合にのみ認められるもので、本来言葉による指摘で教育目的が果たせるのであれば、それによるべきであり、懲戒権は言葉による教育が功を奏しない場合に例外的に認められたものということになります。

そのため、親が子供に対して懲戒権を行使しようとするときは、それによらない方法で子供の教育が果たせないかどうか、十分に検討した上で行使することが必要です。

調停離婚 ちょうていりこん

本来夫婦間の離婚は当事者同士で話し合うのが原則ですが、夫婦間で離婚に関しての話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所を通じて離婚を協議することとなります。この場合、離婚の訴訟を直接提起することはできず、まずは調停を利用して離婚の検討を行うこととなります。これを調停離婚と言います。

この調停においては、家庭裁判所が用意する調停委員会の関与のもと、離婚するかどうかについての話し合い、および財産分与や養育費といった離婚後の事情についても協議されることとなります。

そして、協議の結果離婚が相当とされた場合は、離婚を確定する調停が成立し、調停調書が作成されます。この調停調書は、確定判決と同じ効力を持ち、当事者は後から調停調書に記載されている内容と異なる事項を主張することができなくなります。

一方、協議がうまくまとまらず、調停が不成立となった場合は、審判離婚あるいは裁判離婚へ協議の場が移ることとなります。

調停前置主義 ちょうていぜんちしゅぎ

裁判によって解決することのできる事柄の中には、金銭関係などといった迅速性の高く、単発的なものが多いです。もっとも、離婚や親子関係をめぐる家事事件は裁判の後も人間関係が長く継続するため、極力裁判によらない話し合いによる解決が望まれます。

そのため、家事事件の場合は、調停を通じて話し合いの場を経た上でなければ、裁判を起こすことができません。このように裁判の前段階として調停を行わなければならない仕組みを調停前置主義といいます。

裁判による強制的解決には馴染みにくい、人間関係そのものに関する家事事件は、多少の時間と労力をかけたとしても、まずは話し合いによる解決を探るべきであるとされています。

貞操義務 ていそうぎむ

貞操義務とは、夫婦がそれぞれ負う、互いへの誠実義務であり、配偶者以外の者と性的交渉をしてはならないというものを言います。

夫婦生活は、人格的な共同生活を出発点とするため、それを揺るがすような不誠実な行いがなされないように、貞操義務というものが定められています。

これに反した場合は、不貞行為として離婚事由となりえますし、慰謝料や損害賠償の対象にもなりえます。もっとも、貞操義務に一度反したら必ず不貞行為などに該当するわけではなく、貞操義務違反を一つの要因とした上で、さらに、その他多くの事情を考慮して離婚や慰謝料の決定がなされます。

そのため、貞操義務違反がなされた場合に必ず不貞行為が認められるわけではなく、貞操義務違反がなくとも、不貞行為は認められる可能性があるということを認識しておく必要があります。例えば、貞操義務違反時すでに夫婦の間における婚姻関係が破綻していたような場合は、たとえ貞操義務違反があったとしても、不貞行為とならない場合もあります。

もっとも、貞操義務違反がどのように不貞行為や慰謝料に通じて来るかは困難な問題であるため、疑問を抱く人は、弁護士に相談してアドバイスを受けるのが望ましいと言えます。

特別児童扶養手当 とくべつじどうふようてあて

特別児童扶養手当とは、20歳未満の児童であって、身体又は精神上に一定以上の障害を持つ児童を養育する者に支給される支援手当のことを言います。

この特別児童扶養手当は、障害を抱える子供の養育に生じる様々な経済的困難を支援するための制度であり、1級又は2級の等級に該当する児童を養育する家庭に対して支給されます。

もっとも、児童が厚生年金などの公的年金を受け取っている場合や、養育家庭の所得が規定の額を超えるような場合は、支給の対象にはなりません。

そのため、特別児童扶養手当の受給を考える人は、自らが受給資格を有するかについてチェックする必要があり、理解が困難な場合は、弁護士に相談してアドバイスをもらうことが求められます。

特別養子縁組 とくべつようしえんぐみ

特別養子縁組とは、原則6歳未満の子どもの福祉上の要請に従い、実親と子どもとの法律上の親子関係を消滅させた上で、養親と子どもとの間に実親子に近しい関係を構築する、家庭裁判所の審判のことを言います。

この特別養子縁組は、普通養子縁組とは異なり、実親との法律上の関係を解消した上で、養親と子どもの関係を構築するものであるため、子どもの生活環境を大きく変動させるものです。そのため、対象となっている子どもは原則として物心のつく前の6歳未満までとされています。また、一度特別養子縁組をすると、養親は子どもと離縁することができないのが原則です。

さらに、子どもの生活環境を十分満たせるほどの経済的余力と円満な人間環境を有していなければならないため、養親となれるのは、婚姻している夫婦であって、両者が共に25歳以上である必要があるのが一般的です。これは、父と母という子供に必要な親の存在を満たし、かつ適切な養育が施せるほどの経験を積んだ年齢に達していることを要件とすることによって、縁組される子供の生活を保障しようとするものです。

そして、特別養子縁組をする場合には普通養子縁組と異なり、家庭裁判所において申立て、審判を経なければなりません。そのため、子どもの特別養子縁組をしようと考える夫婦は、自らが養親として十分の素質を有するかについて事前の検討を行った上で、審判の申立てを行う必要があると言えます。

特有財産 とくゆうざいさん

特有財産とは、夫婦における財産のうち、夫婦の一方が結婚前から所有していたものや、相続や贈与によって独立して手に入れた財産のことを言います。

例えば、結婚前から夫が家を所有していた場合、結婚後その家で夫婦が生活していたとしても、その家は夫の特有財産として数えられることとなります。

この特有財産の特徴は、夫婦が離婚し、結婚生活の中で共同して作り上げた財産を分配する財産分与を行う際、分与の対象に入らないことが挙げられます。つまり、財産分与は夫婦の結婚生活の中で得られた財産についてのものなので、結婚前に手に入れた財産や、結婚生活と関係なく手に入れた財産はその分与対象にならないということになります。

そのため、離婚の際は何が特有財産になるかは極めて重要なこととなります。特に、財産が誰の所有にあるのかを示す名義がはっきりと存在しない場合などは特有財産についての争いが顕著になります。このような場合は、弁護士に相談し、特有財産として認められるための方法を検討することが望ましいと言えます。

内縁関係 ないえんかんけい

内縁関係とは、婚姻関係の意思を持った男女が、婚姻届を提出することなく生活を共にすることを言います。あくまで婚姻届を提出しておらず、実質的には婚姻しているのと同義な状態なため、事実婚とも表現されます。

この内縁には、婚姻届を提出していないだけで、夫婦として生活しているという実態に配慮し、できる限り法律婚と同様の規定を適用させることができます。そのため、内縁関係にある男女の間には婚姻費用の分担や、離婚時の財産分与の規定が準用されることとなります。もっとも、法律婚において適用されるあらゆる規定が内縁関係にも適用されるわけではなく、例えば、内縁関係にある男女の間に出生した子供は、法律婚の場合と異なり、原則として非嫡出子として扱われるようになります。

この内縁関係は、婚姻届を提出していないという手続き上の不備への配慮に過ぎず、内縁関係にある男女両者の間には婚姻しているとの認識が必要です。そのため、男女が一緒に生活をするという同棲とは一線を画すものであるということに配慮が必要です。

日常家事債務 にちじょうかじさいむ

日常家事債務とは、夫婦が生活をするにあたって負担すべき共同の債務のことを言います。

本来、婚姻関係にあるとしても夫婦は独立した個人であるため、夫が妻の、妻が夫の債務を負担しなければならないということはありません。そのため、例えば、ゴルフが趣味の夫が高級ゴルフクラブを購入したとしても、そのローンを妻が負担する必要はないということになります。

もっとも、日常家事債務は夫婦両者に関係するものであり、夫婦の生活に必要なものとなるため、夫婦の一方が支出した場合であっても、その債務は夫婦共同の負担となります。この場合、何が日常家事債務に当たるかは夫婦の金銭状況や生活基盤の程度によりますが、一般的には光熱費や食費、医療費などは日常家事債務の対象となります。

日常家事債務にあたるとすると、夫婦は共同して負担することとなるため、債務に関する請求が債務について与り知らない夫婦の一方に及ぶことになります。そのため、請求が及んでいる債務が本当に日常家事債務に含まれるものであるどうかは、債務の負担を迫られる夫婦の一方にとっては重要な事柄となるため、弁護士に相談し、請求されている債務が日常家事債務にあたるかどうかについてアドバイスをもらうことが必要となります。

判決離婚 はんけつりこん

夫婦の離婚について、当事者同士の話し合いではまとまらず、また、家庭裁判所における調停等の制度によっても話し合いがまとまらなかった場合は、裁判を通じて離婚を求めることができます。この裁判における離婚を認める判決のことを判決離婚と言います。

判決離婚は、離婚を求めるための手段としては最終手段に位置付けられます。裁判というのは当事者の請求を認めるか認めないかの二者択一の判断であるため、当事者双方にとって妥協的な、柔軟な判断をすることができませんし、また、強制的に関係を解消するため、離婚した夫婦の間にしこりを残すこともありからです。そのため、離婚を求める強い意思がある場合であっても、まずは話し合いから進めていくべきとされています。

判決離婚が成立した場合は、その時点で離婚が成立するわけではありません。そのため、判決確定後10日間以内に判決書藤本、判決確定証明書とともに離婚届を市町村役場に提出する必要があります。この場合、離婚する相手方の署名や押印は必要ありません。そして、これによって離婚が確定されることとなります。

判決離婚を得るためには、訴訟で勝訴する必要があります。もっとも、訴訟には大変な時間と労力が必要となるため、弁護士に依頼して、代理人として処理してもらうのが一般的です。そのため、裁判での決着を求める場合は、離婚に詳しい弁護士に相談することが必要です。

非嫡出子 ひちゃくしゅつし

非嫡出子とは、法律上の婚姻していない男女の間に生まれた子供のことを言います。

この非嫡出子は、法律上の婚姻をしている夫婦の間に生まれた子供である嫡出子との対比がなされることが多いです。

まず、非嫡出子となると、戸籍における父母との続き柄の欄において、嫡出でない子の欄に印がなされるため、第三者から一見して、非嫡出子であることが判明してしまいます。

また、非嫡出子をめぐる大きな問題としては相続権に関するものが挙げられます。非嫡出子は、婚姻関係にない男女の間に生まれた子供なため、原則として父の相続権を持ちません。もっとも、父親による認知を受けることによって、非嫡出子にも相続権が認められるようになります。この場合非嫡出子に認められる相続権は、これまで嫡出子の2分の1とされていましたが、平成25年の民法改正によって非嫡出子の相続分は嫡出子と同等のものとされるようになりました。

そのため、非嫡出子は父親による認知を受けているかどうかによって、大きく状況が変化するものとなります。そのため、父親から認知を得られていない非嫡出子が認知を得るために、弁護士に相談し、交渉の代理人として当たってもらうことが重要です。

夫婦関係調整調停 ふうふえんまんかんけいちょうせいちょうてい

夫婦関係という、個別的な内容については裁判による解決よりも、当事者同士の話し合いによって解決する方が、遺恨を後に残さないため有用と考えられます。

もっとも、当事者同士での話し合いがうまく機能しない場合もあるため、その場合は家庭裁判所の調停を利用する方法があります。それが、夫婦関係調整調停と言います。

この夫婦関係調整調停は離婚を考えている夫婦を対象とした離婚調停と、夫婦関係の再構築を考えている夫婦を対象とした円満調停に分けられます。

そして、夫婦は調停を通じて双方の意見を調停委員を通して交換し、お互いに納得のいく結果となるまで話し合いが続けられることとなります。

お互いに納得がいく結果となった場合は、調停調書が作成され、その後夫婦は調停調書に沿った生活を送ることとなります。

夫婦間の契約取消権 ふうふかんのけいやくとりけしけん

夫婦は日常生活を共にする家族関係であり、極めて密接な関係を有しています。そのため、夫婦間で取り決められた契約は、いつでも取り消すことができます。(民法753条)

この規定は、夫婦間は個人と個人の間における契約的な拘束を認めるべきでなく、日常生活を円満に続けるために当事者間の取り決めについても柔軟な運用を図るべきという趣旨に基づくものです。

もっとも、例えば夫が自己所有の車を妻に売却した後、妻が他の人に車を転売したような場合、夫が妻との契約を取り消した場合は、妻から車を購入した人は、夫に車を返却しなければならないように思えます。

しかし、いったん夫婦の枠を超えた取引が発生している場合は、その取引に関与した人を保護する必要があるため、このような場合は夫による契約の取り消しはできません。

夫婦間でも稀に重要な契約がなされる場合があります。しかし、その取引に他の第三者が関与しているかどうかによって、契約を取消せるかどうかの結論は変わるため、この点に疑問を持つ場合は、弁護士に相談するのが安全と言えます。

夫婦別産制 ふうふべっさんせい

夫婦は日常生活を共にする存在であるため、夫婦が共同で構築した財産については共有のものとなります。もっとも、本来財産というものは一人一人個別のものであるのが原則です。そのため、夫婦が婚姻前から有していた財産など、夫婦関係とは別に得られた財産については、それぞれ固有のものとなります。これを夫婦別産制と言います。

この夫婦別産制は、夫婦が離婚する時の財産分割の場合などで問題となります。つまり、財産分割とは、夫婦が共同して構築した財産について、夫婦それぞれの寄与度に応じて分配するものであるため、そもそも夫婦個人の財産は対象にならないのです。そのため、夫婦別産制を通じた夫婦それぞれの財産の確認は極めて重要な問題となります。

もっとも、何が、固有の財産で、何が共有の財産となるかについては、なかなか判断が難しいところであるため、この点について争いが生じている場合は、弁護士に相談して判断を受ける方がいいと思われます。

復氏 ふくし

復氏とは、一度氏を変更した人が、その後の事情変化に応じて変更前の氏に復することを言います。

まず、夫婦は婚姻によって氏を夫婦の一方に改めることとなりますが、離婚した場合、氏を改めた人は、その氏を名乗る必要性がなくなるため、婚姻前の氏に復することができます。

次に、夫婦のうち一方の配偶者が死亡した場合は、死亡した配偶者との婚姻関係は解消されるため、婚姻前の氏に復することができます。

また、養子縁組によって養子となった人は、養子親の氏を名乗ることとなりますが、離縁によって養子縁組関係が解消された場合は、養子縁組前の氏に復することができます。

この復氏の手続きは、役所における届出が必要となるため、その手続きが複雑でうまく理解できないような場合は、弁護士などに相談し、アドバイスを受けることが必要です。

普通養子縁組 ふつうようしえんぐみ

養子縁組のうち、養子親と養子の間における法律上の親子関係を生じさせないまま、日常生活上の関係を構築することを普通養子縁組と言います。

普通養子縁組では、養子と実親の親子関係は維持されたまま、養子親と養子の関係が構築される点が特徴的です。

また、普通養子縁組の場合、養子親の年齢は20歳以上であればよく、養子については何ら年齢制限がなされていません。もっとも、養子が15歳未満の場合は、実親による承諾が必要となります。

そして、普通養子縁組に関する手続きは当事者双方の同意があれば、あとは養子縁組成立の届出によって成立するため、複雑な手続きを要しません。

もっとも、普通養子縁組によって、養子は養子親からの相続権を獲得するなど、生活上親子関係と同義の効果を得ることとなります。そのため、養子の取り決めを行うにあたっては、慎重に判断し、行う必要があります。養子縁組に関する事後的なトラブルを回避するために、養子縁組に際しては、弁護士に相談することが重要と言えます。

不貞行為 ふていこうい

不貞行為とは、夫婦間において成立する貞操義務に反する行為を行うことを言います。この貞操義務は婚姻関係にある者の間に成立するものであり、内縁関係にある場合であっても発生します。

不貞行為は、世間一般で言うところの不倫や浮気と共通する部分はありますが、常に同一とは限りません。例えば、夫が風俗施設等に通った場合、それが不倫や浮気になるとは通常考えられませんが、不貞行為にはなりえます。そのため、不貞行為と不倫や浮気とは、共通する部分はあるものの、同一の概念とはなりません。

夫婦の一方が、不貞行為を行った場合、それを理由として離婚することができ、いわゆる法定離婚事由として定められています。また、不貞行為を理由として慰謝料請求を行うことができます。そのため、相手の不貞行為を原因として離婚などの請求を考えている場合、相手の行為が不貞行為に当たるかどうかの検討が必要となるため、予め弁護士に相談した方が好ましいと考えられます。

扶養義務 ふようぎむ

扶養義務とは、家族の間に課される、相互の生活を保持継続するための義務のことを言います。家族という密接な関係の中では、相互に協力して生活すべきという要請があります。そのため、家族の中では一人一人が独立して生活するのではなく、家族の構成員が互いに助け合って生活できるように配慮する必要があります。

特に、親子の間においては、子は一人で生活することは困難なため、親による扶養が必須となります。そのため、親は子に対し監護し、教育する義務が扶養義務として生じることとなります。

もっとも、扶養する能力がないにもかかわらず、扶養義務を負うことはありません。扶養義務は相互に協力して生活することを求める義務となるため、あくまで義務者の生活が崩れない範囲で行われることが前提となります。

そのため、扶養義務が果たされない場合、扶養義務を求めていくこととなりますが、その場合、扶養義務が認められる場合となるのか、どの程度の義務が求められるのかについて認定する必要があるため、弁護士に相談して、その判断を受けることが望ましいと言えます。

扶養的慰謝料 ふようてきいしゃりょう

扶養的慰謝料とは、夫婦が離婚した後、一方の生活が困難になってしまうような場合、その一方の生活を支援するという意味で支払われる慰謝料のことを言います。

この扶養的慰謝料とは、財産分与作業の中で行われる清算的慰謝料とは別途で行われます。まず、清算的慰謝料の算定を行い、その算定の結果慰謝料の額が決定したとしても、一方の生活を支えるには不十分な場合があります。特に、妻が専業主婦として活動していたような場合においては、離婚後妻は自分で生活するための職業や貯蓄を持たないため、生活の危機に瀕する可能性があります。そのため、このような場合の妻の生活を保護するために、扶養的慰謝料が支払われることとなります。

この扶養的慰謝料は、慰謝料の中でも特殊な部類となるため、当事者の話し合いを緻密に重ねた上で決定することが望ましいとされています。そのため、扶養的慰謝料を求めるような場合は、冷静に交渉ができる弁護士に依頼することを検討するのが望ましいと言えます。

法定離婚事由 ほうていりこんじゆう

法定離婚事由は離婚訴訟の場面で離婚するにあたって必要となる、離婚事由について法律で定めたものを言います。

法定離婚事由は5種あり、「不貞行為」「悪意の遺棄」「3年間の生死不明」「回復の見込みがない強度の精神病」「婚姻を継続しがたい重大な事由」が挙げられます。

これらのうち、もっとも指摘されることの多い法定離婚事由は、「婚姻を継続しがたい重大な事由」となりますが、それ以外の事由についても指摘されることは考えられます。

これらの法定離婚事由が認められる場合は、離婚訴訟の場面で離婚の判決がなされることとなるため、離婚を求めて訴訟を提起する側としては、この法定離婚事由を備えることが重要といます。そのため、離婚訴訟を提起する方は、十分法定離婚事由を供えられているかどうかについて、弁護士の判断を仰ぐ必要があると考えられます。

母性の優先 ぼせいのゆうせん

母性の優先とは、夫婦が離婚するにあたって、子供の親権を定める際、どちらが親権を持つかの争いにあたって、子供にとっては母親が存在していることがまず重要であると考え、母親に優先的に親権を認める考え方のことを言います。

特に、乳幼児期の子供にあたっては、母親に対する依存度が大きく、母親が親権を持つべきと考えられています。

もっとも、今日ではこの母性の優先というものは絶対的なものではありません。父親であっても母性的役割を十分果たせると認められる場合は、父親に親権が認められることも少なくありません。また、子供がある程度自立できる年齢に達している場合は、母性の優先の考え方は薄まり、子供の意思が代わりに優先されることとなります。

そのため、母性の優先に沿って母親に親権が認められるにあたっては、子供の年齢、母親の生活状況等、多くの事情を勘案して判断されることとなります。

面会交流権 めんかいこうりゅうけん

面会交流とは、離婚後親権を持つに至らなかった親が、定期的に子どもとの交流を行うことを言います。

夫婦の関係は、離婚という手続きによって終了させることができますが、親子の関係は終了することはありません。そのため、離婚後も子どもが無事に成長できるよう監護していく必要が、親には生じます。

この子どもの成長を促すにあたっては、両親が共に存在し、両親から共に愛を受けるということが重要になります。つまり面会交流とは、子どもの成長に両親と子どものふれあいが必要であるという視点から、導かれる子どものためのものと言えます。

よって、面会交流権は親の自由な権利ではなく、子どもに必要な範囲で認められるものであるということに留意する必要があります。

もっとも、基本的には面会交流を通じて親と子のふれあいを実現すべきとの要請があるため、離婚後子どもとの交流の場を設けてもらえない一方側の親は、弁護士と相談し、面会交流を実現できるよう働きかけることも必要です。

モラルハラスメント

モラルハラスメントは、相手のもつ価値観や行動に対して暴言などによって攻撃することであり、精神的な暴力とされています。

夫婦の生活の中では、価値観の相違が現れることは決して少なくはありませんが、過剰に相手を罵ったり、暴言で相手の品位を傷つけることは、たとえ夫婦間であっても許されるものではありません。

そのため、このようなモラルハラスメントも婚姻を継続しがたい重大な事由にあたり、離婚原因になることもあります。

しかし、モラルハラスメントは精神的な攻撃ということもあり、外から一見して判断できる物理的な暴力とは違う難しさがあります。単なる日常生活における喧嘩に過ぎないのか、その域を出てモラルハラスメントにまで至っているのかの判断は、そう簡単にはできません。

もし、モラルハラスメントを原因として離婚を考えている場合は、相手方の言動がモラルハラスメントであると認定してもらえるように、日々の生活における暴言をできる限り記録し、それらでもってモラルハラスメントを認定できるかについて、弁護士に相談することが望ましいと言えます。

有責配偶者による離婚請求 ゆうせきはいぐうしゃによるりこんせいきゅう

有責配偶者、すなわち離婚原因を作り出した者は、原則として離婚を請求することはできません。もっとも例外的な場合に限り、有責配偶者であっても離婚請求をすることができます。

まず、長期間別居していることによって、ほとんど夫婦関係が形骸化してしまっているような場合は、有責配偶者による離婚請求を認めずに維持すべき夫婦関係がそもそも存在しないため、このような場合は有責配偶者による離婚請求も認められます。

次に、養育すべき未成熟児が存在しない場合も挙げられます。このような場合は、子供のために婚姻関係を継続させるべきという要請がないため、当事者の意思を尊重し、有責配偶者による離婚請求も認められます。

また、仮に離婚したとしても、無有責配偶者が精神的、社会的、経済的に苛酷な状況に置かれることがないということが必要です。これは、無有責配偶者の離婚後の生活を保護するために求められます。

以上の3つの要件を満たす場合であれば、有責配偶者からであっても、離婚請求をすることができます。もっとも、要件を満たす場合であっても離婚請求が認められない可能性があるため、まずは弁護士に相談の上、アドバイスを受ける必要があります。

結納 ゆいのう

結納は日本において慣習上認められている、婚姻を前提とした贈与契約のことを言います。

結納で贈与されるものは、結納金と呼ばれる金銭のほか、土地や建物、日用品など、多岐に及びますが、相当程度の価値を持つものが送られることが多いです。そのため、結納後に婚姻が解消された場合や結婚直後に離婚したような場合、結納を返還するかどうかが問題となります。

この点、結納が婚姻を確認するために行われる贈与であることを考えれば、婚姻解消及びに短期間の結婚生活後の離婚の場合には、結納の返還が求められます。もっとも、後者の短期間の結婚生活については、明確な基準があるわけではなく、当事者の間でも判断が難しい事項となります。そのため、結婚して間もなくして離婚したような場合で、結納の返還を求めようと考えている場合は、弁護士に相談した上で検討する必要があります。

養子縁組 ようしえんぐみ

養子縁組は、血縁関係のない者の間に法律上の親子関係を構築するための規定となります。

養子縁組を行うと、法律上の親子関係が構築されるため、戸籍上の記載も変更となり、相続関係について変動が生じます。

この養子縁組には、普通養子縁組と、特に幼い子どもを対象にする場合の特別養子縁組が存在しています。

養子縁組を利用しようと考えている場合は、自分の望む縁組が、普通養子縁組で足りるのか、特別養子縁組の方が望ましいのか検討の上、手続きを行うことが望ましいと言えます。また、養子縁組には要件などが法定されているため、気になる場合は弁護士に相談するのが望ましいと言えます。

養育費 よういくひ

養育費とは、子どもに対する監護義務を負う両親が負担すべき、子どもへの監護教育費用のことを言います。

養育費は、子どもの成長のための費用になるため、親はたとえ自らの資力が乏しい状態であったとしても、養育費の負担を免れることはできません。また、自己破産などの手続きを行ったとしても、養育費が免除されることはありません。

もっとも、養育費は両親が分担して負担すべきものであるため、親の一方の資力が乏しい場合は、もう一方の親がその分を負担してバランスをとる必要があります。

この養育費については、両親の離婚後に問題となることが多く、離婚時に養育費について詳細に取り決めを行っているような場合は問題ありませんが、このような取り決めを行っていない場合は、調停や審判を通じて養育費を請求していくこととなります。そのため、このような場合は弁護士に相談し、養育費を得るためのアドバイスをもらうのが重要と言えます。

養育費増額請求の申立て よういくひぞうがくせいきゅうのもうしたて

養育費は子供の監護教育のための費用となります。そのため、子供の成長につれて、必要となる額に変化が生じることも考えられます。

例えば、両親の離婚時に子どもが小学生だった場合に養育費を一定額定めたとしても、その後子どもが成長し、高校生になったような場合、子どもが小学生であることを前提として定めた養育費の額では、子どもの監護教育に不十分である可能性があります。また、監護親の収入状況が悪化し、今までどおりの養育費では十分な暮らしの水準が確保できないような場合も考えられます。

これらのような場合は、養育費の増額請求を行うこととなります。この場合、まずは当事者同士で任意に話し合うことから始まりますが、当事者同士で養育費の変更について意見がまとまらなかった場合は、養育費増額を求める調停、審判の申立てを行うこととなります。この申立ては家庭裁判所において行われるものですが、申立てを行う前段階で、養育費の増額請求が認められるかどうかについて弁護士に意見を聞くのも重要です。

離婚協議書 りこんきょうぎしょ

離婚協議書は、夫婦が離婚する際に作成される合意内容について書面の形式に改めたものを言います。夫婦が離婚をするにあたっては、財産の分与や真剣、慰謝料についてなど、多くの事情について取り決める必要があります。そのため、これらの中で何についてどのように合意するかを書面化したものが、離婚協議書になります。

離婚協議書は、離婚後の関係についての処理になるため、作成しておく方が便宜的ですが、手間がかかることや、内容について双方の合意が得られない場合も多く、離婚協議書を作成しないまま離婚をする場合も多々あります。

もっとも、財産分与や慰謝料についてあらかじめ定めておけば、のちに争いになることはなく、また、親権を得る親としては、離婚の段階で養育費について請求できるよう書面を作成しておく方が望ましいと言えます。とはいえ、離婚協議書に何を書けばいいのか、当事者にはなかなかわからない点もあるため、そのような場合は弁護士に相談した上で内容を取り決めることが望ましいと言えます。

離婚届 りこんとどけ

離婚届は、夫婦が協議離婚、裁判離婚等を行う場合に、離婚したという事実を役所に届け出るための書類のことを言います。一般的には、協議離婚における離婚届の方が知られていますが、裁判所を通じた離婚の場合であっても、離婚届の提出が必要な点に注意が必要です。

この離婚届は、役所に提出することによって、確定的に婚姻関係が解消したことが現れますが、そのためには離婚届に夫婦が共に記名を行う必要があります。また、子どもがいる場合は、子どもの親権を夫婦のどちらが持つのか、子どもの本籍地をどこにするのかについても記入する必要があるため、記入漏れについては注意をする必要があります。

そして、特に協議離婚の場合には離婚届について証人の記載が必要なことも忘れてはいけません。離婚がこれまでの婚姻関係を終了させる重要な手続きであることを考えると、当事者の協議によって離婚する場合であっても、それが当事者の協議によってなされたと証明する証人が必要になります。

履行勧告 りこうかんこく

履行勧告とは、債務者による債務の履行がされない場合に、債権者が裁判所に申し立てることによって発せられる、裁判所から債務者への履行の勧告のことを言います。

例えば、離婚時に養育費の定めをしたにもかかわらず、養育費の支払いがなされない場合、子どもの監護親は養育費を請求していく必要があります。しかし、裁判手続きを利用するのは時間も手間もかかるため、安易には利用できないという実態があります。

この点、履行勧告は裁判所が関与する手続きでありながら、簡易迅速に行われるため、養育費の支払い義務を持つ親に対してプレッシャーを与える一定の効果を持つとされています。

とはいえ、履行勧告に従わなかったとしても何ら不利益が課されるわけではないため、履行勧告にも関わらず債務が履行されない場合は、裁判手続きを利用していく必要があります。

履行命令 りこうめいれい

履行命令は、履行勧告がなされたにも関わらず、債務者による債務の履行がなされない場合に、家庭裁判所から債務者に発せられる、債務履行命令のことを言います。

例えば、離婚後本来支払われるべきであった養育費が支払われなくなった場面において、履行勧告を行ったにもかかわらず履行がされない場合は、次の手段として履行命令を利用することが考えられます。

この履行命令は、家庭裁判所に申し立てた上で、印紙代を支払うことによって利用出来る手続きとなります。もし、履行命令がなされたにもかかわらず、債務者が債務を履行しない場合は、10万円以下の過料に科されるため、履行勧告に比べて債務者への拘束力が大きなものとなります。

もっとも、履行命令によって、養育費を強制執行するといった直接の回収はできないため、履行命令も事実上の強制力しか持たないことに注意が必要です。

和解離婚 わかいりこん

和解離婚は、離婚訴訟の途中段階において、夫婦双方が歩み寄り、和解の形式で離婚を行うことを言います。

本来、離婚訴訟が継続している場合は、判決によって離婚するかどうかを確定させることを当事者は望んでいます。しかし、離婚訴訟が係属している場面においては、離婚を求める一方と離婚したくない他方の存在、あるいは離婚の条件についての真っ向からの対立の存在など、深刻な軋轢が生じていることも少なくはありません。

このような場合に、判決で強制的に離婚したとしても、支払うべき慰謝料を支払わなかったり、養育費を滞納するなど、後々のトラブルに繋がることも少なくありません。

そのため、離婚訴訟の途中であっても、裁判官から和解離婚の勧告がなされることは少なくなく、勧告がなされた場合は、和解による離婚も十分視野に入れて判断する必要があります。

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