年金分割

離婚を決意したとしても、今後のことが不安で踏み切れないという人がいます。確かに離婚をすると夫婦は赤の他人になります。夫婦だからこそ助け合う義務がありました。赤の他人に戻ることで夫婦間の扶養義務もなくなります。離婚後はどれだけ体調に不安を抱えていても、お金がなくても、元夫(元妻)に頼ることはできません。離婚によって赤の他人に戻っているからです。離婚したくても「今後生活して行けるかしら」と不安で離婚できないという話はよくあることなのです。

離婚後の生活を考える上では、離婚のお金について知っておくことが重要です。離婚のお金にはいくつか種類があります。今回は離婚後の生活費に関する重要なお金の話です。

離婚の際に年金分割ができることをご確認ください。

考えておきたい離婚後の生活費

離婚は離婚届が適正に受理されると成立します。これは、普段あまり法律に馴染みのない人でも知っていることではないでしょうか。

離婚は離婚届を提出すればあっさり成立します。離婚は結婚に比べてとても簡単です。

簡単にできてしまうからこそ、その場の勢いで離婚してしまうと後で困ることになります。離婚をするためには、離婚後の生活について考えておくことが大切です。結婚に婚姻意思が必要なら、離婚には今後の金策を考えておくことが必須といえるでしょう。

離婚後の生活を考える上で重要なのは財産分与です。離婚後の金策として代表的なものが財産分与であるといえます。

財産分与は重要なお金!老後のことも考えて

離婚する時には財産分与の請求が可能です。財産分与とは、夫婦で培った財産を離婚に際してわけることをいいます。夫だけが働いて給与を得ていたとしても、それは妻の助力があったからです。妻が家事や育児をこなすことで夫を支えたからこそ、夫は給与を安定して得られるくらい仕事をすることができたと考えられます。夫婦の時に得た財産は「夫婦で培ったもの」という解釈がなされるのです。

離婚すると赤の他人に戻りますから、夫婦の共有財産(二人で培ったもの)をわけなければいけません。会社を閉じる時の清算に似ているかもしれません。夫婦の財産を財産分与という形で清算すると考えてみてください。

財産分与では、預金や不動産を平等に半分ずつわける必要はありません。夫が給与所得を得ていて、妻がずっと専業主婦であったなら、妻の今後の暮らしを考えて妻に預金を多く分与することも可能です。夫は分与を受けずに全て離婚する妻に渡すことも可能です。それぞれの夫婦の事情や今後を考えて、ケースバイケースで分与がなされています。

財産分与は離婚後の生活を考える上でとても大切なお金の問題です。ですが、財産分与だけが離婚後のお金の問題ではありません。離婚後は再婚をしない限り、長い独身生活が待っています。当然、再婚をしなければ老後も一人で生活しなければいけません。「老後」と「お金」というキーワードから何か大切なことを思い出しませんか?そう、老後とお金の問題・・・「年金」です。預金や不動産だけでなく、年金も分割の対象になるのです。

年金は分割できる!年金分割について知っておこう

平成16年に、離婚における年金分割の制度が誕生しました。ずっと専業主婦だった女性は、夫を家事や育児の面で助けてきたのに老後資金に困るという事態が問題になっていました。熟年離婚を検討していても、年金もほとんどないし、生活できないから離婚を踏みとどまるという人が非常に多かったのです。しかし、年金分割という制度ができたおかげで、「婚姻中の年金保険料納付実績」を分割できるようになりました。

年金分割という制度は、年金そのものを分割するという制度ではありません。分割するのはあくまで年金保険料の納付実績になります。年金額が10万円であると仮定した場合に、離婚するからと夫婦で5万円ずつ分割するという単純な話ではありません。ポイントは「婚姻中」「年金保険料納付実績」というワードです。

年金分割の対象になる年金とは

年金分割の対象になるのは、「厚生年金」「共済年金」です。わかりやすく事例で説明しましょう。

夫は40年間A社に務めていました。妻は婚姻期間40年間ずっと専業主婦として家事や育児をしていました。妻として夫を支え続けていました。夫はA社の厚生年金に加入しており、滞納なく年金保険料を払い続けていました。この度、婚姻生活40年で熟年離婚をすることになりました。離婚に際し、夫が40年間加入していたA社の厚生年金を対象に年金分割をすることになりました。

これがよくある年金分割の事例です。年金分割は離婚後ならびに老後の生活資金を考える上で大切な制度になります。

ただし、年金分割請求においては、気をつけなければならないことがあります。分割してもらったぶんは、年金の受給資格期間に算入されないということです。自分の納付期間が少ない場合は分割をしても意味がないという結果になってしまうことがあります。自分は自分で受給資格を満たさなければいけないのです。自分の年金記録を調べておくことは必須であるといえるでしょう。

年金分割の注意点とは

二点、注意しなければいけないことがあります。第一の注意点としては、国民年金は分割の対象にならないということです。あくまで分割対象は厚生年金や共済年金です。自営業を営んでいて国民年金にしか加入していないという夫婦は分割ができません。もう一つの注意点として、分割請求をして利益があるのは、相手が自分よりも多く年金保険料を納付し、支給額が多い場合だということです。相手の方が少ないのであれば、かえって自分が分割しなければならない立場になってしまいます。

例で見てみましょう。夫は厚生年金に加入し、年金保険料を支払い続けました。妻も自分の会社の厚生年金に加入し、きちんと年金保険料を払い続けました。妻は年金分割という制度を知り、夫との離婚を前提に年金の分割を主張しました。確認したところ、納付期間と支給額を夫より妻の方が多いことがわかりました。妻は逆に夫へ分割する立場になってしまいました。

こういった事態もあり得ることです。年金分割を検討するのであれば、①年金の加入履歴を確認する②法律の専門家である弁護士に離婚も含めて相談する、ということが重要です。特に年金分割は制度としても新しく、内容的にも複雑なところがあります。加入歴を見て単純に「大丈夫そう」と判断するのではなく、確実性を求めるためにも弁護士に相談することをお勧めします。

年金分割には2種類ある!「合意分割」と「3号分割」

年金分割の方法は2つあります。一つは夫婦の合意による分割(合意分割)と夫婦の合意が必要ない分割(3号分割)です。合意分割とは、夫婦の合意によって年金分割の割合を決めることをいいます。話し合いがまとまらない場合の対処法としては次の項目でお話しします。対して3号分割は夫婦の合意は必要ありません。必要な手続きをすることによって分割をすることができます。

どちらの方法で分割請求するかは、「話し合いはまとまりそうか」「希望する分割割合」「専門家の意見」を総合して決めるのがいいでしょう。

話し合いがまとまらない場合はどうやって決めるの?

当事者同士で年金分割の話し合いがまとまらなければ、裁判所に助けを求めることになります。最終的に調停や審判で決着をつけます。ただし、離婚した日の翌日から起算して2年の経過により、裁判所へ年金分割の申し立てができなくなってしまいます。話し合の段階で弁護士に相談した方が安心です。

離婚後の生活費は公的支援制度を検討することも重要

財産分与をして、年金分割の手続きをしても、生活費を考えると心もとないという方が多いのではないでしょうか。人間一人が0歳から死ぬまで必要な費用は2億円ほどだといわれています。単純計算でも、40歳で離婚をすると残りの人生には1億円のお金が必要という試算になります。前述した通り公的年金は少なく、財産分与で1億円ものお金を手にすることのできる人は稀ではないでしょうか。だからこそ、財産分与や年金分割だけでなく、離婚後に自分が死ぬまでどうやって生活費を捻出するかを考えておくことは大切なのです。

離婚後に仕事をすることが対策の一つとして考えられます。お子さんの親権を持った方は、離婚後の就労について真っ先に考えることでしょう。一人で生きていくためにもお金が必要ですが、子供を養うとなるとさらにたくさんのお金が必要になります。財産分与や年金分割だけでなく、離婚前に就労してお金を稼ぐことについて考えておくことは、金策としてとても重要なことです。

離婚後にどうしても困ってしまうのなら、公的な支援制度の活用も検討しましょう。自治体によって支援制度の中身や申請方法が多少異なりますので、詳しくは各自治体の窓口に問い合わせを行ってください。

これらはあくまで代表的なもので、他にも色々な支援制度があります。財産分与や年金分割だけでなく、こういった支援制度について知っておくことも、離婚に踏み切るためには重要なことなのです。

まとめ

離婚後のお金について考えておくことは大切なことです。離婚をすれば結婚生活は終わりますが、人生は離婚後も続きます。財産分与請求や年金分割請求について知っておくことも、とても大切なことなのです。

年金の納付期間などの要件を満たしていれば、年金分割請求が可能です。ただし、離婚後のお金の問題は財産分与や年金分割だけで決着するわけではありません。必要なら公的な制度の利用も検討しましょう。また、離婚のお金の問題については、年金分割も含めて弁護士に相談し、早期解決することが重要です。

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