養育費の請求調停

離婚時養育費の取り決めをしないで離婚後に養育費を請求する場合、まずは当事者間での話し合いを進めることになります。やはり一度離婚時に取り決めなかったものを、後から求める以上は、相手の意見も反映させた丁寧な話し合いが求められますので、まずは、何故このタイミングで養育費を支払って欲しいと思ったのか、現在の子どもの状況はどうなっているのか、相手から子どもとの定期的な接触なども求められた場合に応じるつもりがあるのか等を深く考えながら、ある程度相手に寄り添う姿勢を見せた話し合いを進めましょう。

もっとも、話し合いがうまく進まなかったり、早期の段階で当事者間の険悪な対立が発生してきていると感じるような場合は、次の手段として養育費請求調停というものに、話し合いの場を移して行くことになります。養育費請求調停では、家庭裁判所において、当事者と調停委員を交えながら話し合いを進めます。当事者同士での話し合いでは、双方の主張を交わすだけで、建設的な話し合いが実現できないことも多いですが、中立的な第三者を交えることによって、互いの主張を整理しながら話し合いを進めて行くことができます。また、調停委員は養育費に関する争いに日々携わっていますので、その経験からくるアドバイスや仲裁の提案は、当事者にとっても強いメリットをもたらすことが多く、養育費を求める側としては積極的に利用すべきといえます。

もっとも、調停委員は養育費を請求するひとり親の味方というわけではありませんので、調停委員に対して自分の主張が認められる必要があるという事情の数々を、懇切丁寧に説明して行くことが肝心です。

また、調停を通じて養育費の取り決めがなされる場合、養育費を支払うかどうかといった点だけでなく、どれだけの額を、どのような方法で、子どもが何歳になるまでといった具体的な内容まで全て決定することになります。そのため、調停の場では子どもの成長にどれだけの金額が将来必要になるかといった点を試算したうえで、話し合いに望むことも重要といえます。

結果的に調停が上手く進み、養育費が支払われる方向で決着が着けば、調停調書が作成され、それに従って養育費の支払いがなされるようになります。もし、養育費の支払いが滞るような状態が発生し、強制執行を視野にいれる必要が生じた場合は、この調停調書を債務名義として、これまで説明した強制執行の手続きを踏んで行くことになります。

といっても、調停もあくまで第三者を交えた話し合いに過ぎませんから、当事者間で納得のいく決着を着けられなかった場合、調停は不成立となり終了します。そして、調停の不成立後自動的に審判手続というものが開始されます。これは、裁判官が直接関与し、かつ裁判官が当事者の間の一切の事情を考慮した上で、どのような決着がなされるべきかの判断を下すものです。

この審判手続によって養育費の支払いが認められた場合は、審判書というものが作成されます。この審判書も、養育費を請求する根拠となり、養育費が支払われなくなった場合は、この審判書を債務名義として、強制執行をおこなっていくことになります。

強制執行を行使せずに放置を続けた場合、強制執行どころか養育費を請求する権利すら消滅してしまう可能性があります。このように、時間の経過によって権利が消滅してしまい、相手に請求できないことを時効といいます。では、この時効はどのように成立するのでしょうか。

例えば、離婚の際に養育費についての取り決めを行い、公正証書として残していた場合、養育費の支払いについて滞りがあったとしても養育費に関する公正証書を下に強制執行を行えますが、強制執行に関する手続きも手間であるし、金銭について切迫した事情もないことから、深く相手を追求せず放置するという判断をひとまずとることにした。しかしその後子どもが成長し、大学進学を視野に入れるようになってきたあたりになり、入学費授業料等で大きな出費が予想されるため、本来支払うはずでありながら支払っていなかった養育費についてまとめて請求しようとしても、時効の過ぎた分については請求できないといった事態に陥ってしまうケースが考えられます。

このように、養育費の請求を忘れたまま時間が過ぎたりすることは決してありえない話ではないため、養育費の請求権を持っている方は、時効が過ぎて請求できなくなるように注意しましょう。

さて、この時効についてですが、請求できる時から10年を過ぎた分については請求できないと定められています。つまり、養育費の取り決めが完了した直後から、時効の計算は開始しますので、養育費の取り決めがなされただけで安心することはなく、実際に養育費を支払ってもらえるところまで求めましょう。一度養育費を支払われたら、経過していた時効の計算は再びリセットし、養育費の支払いを滞らせるような事情が発生すると、再び時効の計算が一から始まることになります。

時効というものは、基本的にこまめで継続的に養育費を支払ってもらえるようにしているか、養育費の取り決めを行ってからすぐに支払いを開始してもらっているような場合にはさほど問題となりません。もっとも、何かの事情で養育費を支払ってもらうことなく過ごすことも考えられますから、もしそのような事態が生じている場合は、早急に相手へ養育費の支払いを請求し、時効の進行を停止させる必要があります。

特に、養育費の取り決めまでに到達するのに、調停や裁判等負担の大きい制度を利用してやっと手に入れたような場合にも関わらず、時効によってその養育費を請求する権利を水泡に帰してしまうのは、好ましいことではありません。そのため、養育費を受け取る側は、養育費の支払いについてシビアな態度で挑むべき、と言えます。

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